幾千の夜を越え
そっとズボンのポケットに忍ばせたのを奴も気付いていただろう。

「人間と関わりやがて交わる…。ところが分神と人間の子供に力は受け継がれなかった」

唐突に話し始めた奴を
怪しげに見やる。

「何だよいきなり…」

「お前の知りたがってた尊との…馴れ初めだろ?」

反応を楽しむ様に嬌笑を浮かべ、

「聞きたくないなら次にいくか」

「なっ」

直ぐに表情を戻す。

「人間の間に力は受け継がれずに血は益々薄くなる一方だ…。
窮地に立たされた父神は全知全能の神に助けを乞うしかなかった」

想像を遥かに越えた話の内容に
頭も気持ちも追い付かず物語を
聞いてる感覚だった。

「その神ってのが傍若無人な奴で厄介事を冥界の女神に丸投げし、女神は取引を持ち掛ける」

奴には珍しく盛大な溜め息を吐く

「悪趣味な女神は若作りの秘薬…無垢な女の血を捧げることを条件に右近と左近の転生を繰り返す」

言葉を濁しているのか
言い淀んではいるが、

無垢な女の血…若作りの秘薬。

清らかな娘の純血…。

同じキーワードが渦巻く。

裂目から湧き出る亡者の見張り役右近と左近を転生させる為に…、女神に捧げる尊を産み出した。

「尊は右神の遺された髪の毛から造り出された央神だ…」

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