幾千の夜を越え
初めから女神への捧げ物だから、俗世とは切り離されていた。

尊に併せて右近や左近が生誕するのではなく右近や左近の生誕の為に尊を存在させた。

「尊の血を女神の神殿にある盃に注ぐことは次代の右近と左近を…転生させる儀式だったんだよ」

「だとすれば、尊を狙うのは次代の俺達の転生を望まない者だってことじゃないか?」

大体、山神へ輿入れってこと自体大間違いだったんじゃねぇか。

「そうとも限らないさ」

奴の鋭い目線が突き刺ささる。

「裂目から外界へ逃れた邪気達が右近や左近を目指す様に仕掛けたのが尊の肉は万物の理を侵すって罠だったんだよ」

「罠?」

皮肉たっぷりに頷き

「尊の肉を食せば甦りが叶う」

微かに呟く。

亡者も生者もなく復活を願う者が尊を付け狙っていた。

右近は知っていた尊に特別な力は存在しなかったはずだ。

「巧妙に流れた噂は瞬く間に全界に拡がった否…広めさせたんだ」

可哀想な尊は騙されて狙われ、
挙げ句…女神に差し出された。

「尊を狙い襲う者から右近と左近は尊を守る使命を根付かせた。
そうやって右近と左近と尊の関係は出来上がっていったんだよ」

前世で右近は尊を護りきれずに、女神へ純血を捧げられなかった。

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