幾千の夜を越え
思い出した。

暴走した力で村は滅んだんだ。

流れた涙の後を強引に掌で擦る。

「あんな村…なくなって当然だ」

弱々しく立ち上がる。

「右近は最期に力を封印してた」

「何処に?」

奴は答えを導く教師の様に

「あの場で封印出来た処…尊?」

「尊の中…予備封印が必要だろ。尊の中に封印する導入準備は?」

一つずつ先に進めさせる。

「導入準備?予備封印…。
じゃあ違うのか?」

「いいや、あの場で封印が出来た処といえば尊の中だけだそれは、間違いない」

間違った方に惑わされない様に。

「尊の中に予め右近の力を覚えさせておく必要がある…」

「尊の中に力を覚えさせる?」

思い当たらないジェスチャーに、首を捻った。

確実に真実に近付ける様に。

「山神の神殿の中で尊とは2人きりだったのか?」

神殿に着いてから出るまでを、
実際は何も覚えていなかった。

「ああ…」

それを知ってか知らずか
奴は一瞥して目を閉じる。

「神殿から出て山神の社に着くまでは2人きりだったよ」

それが妙に心地悪くて、
言い聞かせる様に繰り返す。

「山神とは冥界の女神だ。
輿入れとは転生の儀式…。
少しずつ違ってるよな?」

「ああ…」

「なら、無垢な女の血とは何だと考えられる?」


< 137 / 158 >

この作品をシェア

pagetop