幾千の夜を越え
言われた意味を考えてんのか、
聞かれてる内容を考えてんのか、

恐らく後項で…。

そんでも俺は黙って待つ。

「えっと…話しがあるからって」

思い出してんのか、
言葉を選んでんのか、

しどろもどろで、
唯でさえ舌足らずな話し方を
更に幼くさせる。

「あっ、手を引っ張られててね」

言いたいことも、
思ってることも、
筒抜けの葵の話しを

話し終えるまで
待つのは、
いつだって、
苦労する。

次に行きたい衝動を押さえ、

黙って待ってた。

「止めてってちゃんと言ったよ?
困りますって言ったもん」

葵の声にならねぇ言葉を聞き取る

「茜の承諾得たって
言われたんだよな?
気許しちまったんだよな?」

コクコクと頷く。

俺はやっぱり甘えのかな?

葵の頬に手を添えて、

「赤くなっから擦んな」

軽く鼻を摘む。

鼻で笑って、

「ブス…ガキ」

涙を止める。

「何よ慎ちゃんの方がガキだもん
慎ちゃんのば〜か」

頬を膨らませ、
睨み上げる。

そんな顔怖かねぇんだよ。

「馬鹿って言った方が馬鹿だ」

「ばかは慎ちゃんだもん」

「馬鹿じゃねぇ?
この前の模試で全国8位だし?」

嘘だよ…思ってねぇよ。
ブスだなんて…
ガキだなんて…
馬鹿だなんて…

そんなこと思ってねぇんだよ。

いつだって俺の方が、
馬鹿で、
ガキで、

堪らなく空虚感を抱えて、
罪悪感に苛やむ。

そのくせ耐えがたい渇きに、
同じ過ちを繰り返す。

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