幾千の夜を越え
長い時間
電車に揺られ思い起こす 。

左山が転校してきたこと。

俺を右近だと突っ掛かって来て、

過去の左近が力を覚醒出来ずに、誰1人…何1つ守れず強い自責の念を感じていたっけ。

「左山にも教えてやらなきゃな」

ポツリと呟くが、
信じるだろうか?

前世の右近でさえ知らずにいた、本来の俺達のお役目を…。

巧く説明出来る自信もなければ、実際に目の当たりにしなければ、とても信じられないだろうと…。

「まぁ…特に支障もねぇし放っておいても良いか」

寧ろ下心のない左近のままなら、葵に惚れることもないだろうし…警護させておく方が都合が良い。

葵とは…
その…良いんだよな…。

右近の力を取り戻しても尊の記憶は戻らないって本当だろうか?

奴に貰った秘薬の入った小瓶を
ポケットから探り出す。

中で小さな結晶が一粒
コロンと転がる。

尊の記憶が戻らなければ
左山が葵を尊と認識する
ってこともないのだろうか?

ともかく、
葵の顔が見たかった。

葵に会ったら先ずは謝ろう。

「数週間も離れててごめん」
それから、
何千の月日の間にけして告げられなかった言葉を送ろう。

現世では使い古された言葉…。

とてもシンプルな一言。

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