幾千の夜を越え
葵の額に俺のそれを合わせ

『尊…右近は貴殿を心底お慕い申し上げております』

念じた。

葵の奥底に眠る尊の魂に届く様に

あの神殿と同じく
彼女を抱き締め
その首筋に顔を埋める。

『慎右衛門…最期に…余の名を』

「葵…」

「慎ちゃん…」

忍ばせた手を葵の肌に滑らせる。

「ぅん…慎ちゃん…」

あの日と同じく知識のない彼女は俺たちの与える刺激に困惑の色を浮かべ恥じらいながら応える。

「ふっ…あっ…」

よく反響する神殿では絹の擦れる音にも尊の微かな声にも…
理性を奪われた。

「はっあ…っ」

今日の彼女等はあの日よりも影の知識からなのか乱れている。

「ぅん…やっ…」

声は…
吐息に混ざるぐらいで変わらず。

「慎ちゃん…そこ…だめぇ…」

でも…ない。

「此処?此処が良いの?」

「やあっ!だめぇ!」

尊なら…こんな可愛い反応はしてくれないだろう。

「んじゃ…此れは?」

「ふぅ!はっあん!あっ…あっ」

右近の時は俺も知識がなかった、尊を大切に労ってたつもりだが…無理をさせたのかもしれない。

「やっあ!ダメ!慎ちゃん!」

湿った音が俺を翻弄する。

反響する神殿の微かなカビ臭さに
尊の声と尊の匂いが蘇る。


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