幾千の夜を越え
「ぅう〜ん」悩まし気な葵の寝言に目を覚ます。

隣で苦悶の表情を浮かべて眠る葵の眉間に唇を付ける。

ゆっくり瞼を開くトロトロの瞳。

「おはよう」

「…おはよう」

焦点の定まらないまま答える。

16年間生きてきて…
此れ程幸福な朝があったか?

イヤ…幸福な朝は合った。

心身ともに満ち足りた朝は初めてに違いない。

「…慎ちゃん…」

もぞもぞと身動ぐと

「どうしよう…私…」

泣き出しそうな顔から

「どうした?やっぱり痛いか?」

みるみる頬を染めていき

「初めてなのに歯止め効かなくて無理させたからな…ごめんな?」

腰に手を回して引き寄せた俺に

「エッチな身体になっちゃった」

爆弾を投下する。

「なぁ!はあぁっ?」

待て待て…これは葵言葉だ。

「葵が俺の為に頑張ってくれた、って証拠だろ?」

葵の鼻先に唇を付けるが、

「でも…慎ちゃんの感覚が残ってるの変だよ…」

上目遣いで俺を見る。

「感覚って?中に居る?」

葵にこんな抽象的な言い方で
果たして伝わるのか?

という自問自答に葵のきょとんとした顔が答えていた。

「いや…だから…!
まだ痛いのか?」

ガバッと飛び起き
布団を捲り上げる。

慌てて体を小さく丸めて隠す葵の隠しきれない裏股には乾いた血の後が残っていた。

シーツには多量の血痕。

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