幾千の夜を越え
興味の対象は最初から決まってる

自分に嘘は吐かねぇ。

ってか…
もう嘘は吐きたくねぇ。

残りの授業も気にせず、
階下へ降りて行く。

授業中の今は、
旧校舎側に人の姿もなく、

静かで、
俺の足音だけが耳に付いた。

ん?
何やってんだこんな処で…。

廊下の少し先、
窓から身を乗り出す格好で
じっと遠望してる。

見渡す限り
視界に入る場所に
他人の姿は確認出来ない。

一人なのか?

脇目も振らず熱心に遠望しては、

手元に視線を移し、
写生して行く。

美術の時間だろうな?

スケッチに夢中で、
気付いてないことを確認して、

向こうからは死角になる
階段の段差に腰を降ろし

正視を決め込んだ。

気付いて欲しいような、
気付かれたらマジィような、

複雑な心境に胸間がざわめく。

真剣に眺望を素描する
横顔を、

頬杖を付いて見つめる。

コンテを握り締めた手で、

触ったことが
丸分かりの

黒く擦れた跡も、

可愛くて仕方ない。

声が漏れないように含み笑う。

また、
頬に掛る髪を払うので

黒く擦れた跡が広がった。

セミロングとでもいうのか、
肩より少し長い、
艶やかな
柔らかい
黒髪を、

掴き上げてやりたくなる。

そして俺は、

そこから覗く
白くキメ細かく
柔らかく滑らかな
項に…

唇を這わせ…

やっべぇ〜
妄想入ってるし…。

こりゃ色が不足し過ぎんだな?

ヤバイ妄想を取除くべく、
襟首に掌を当て、
首を回した。

立ち去ろうと、
腰を上げ、

最後にもう一度、

その姿を
視界に捉えた。

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