幾千の夜を越え
相変わらず、
窓の外に身を乗り出して覗き込み

危なっかしいヤツだから、
周りに人が居ないことが
気掛かりではあったが、

逆に変なヤローと二人も困る。

俺自身、
未だに残る過保護さに、
苦笑いを浮かべ

構図を見てんのか、
コンテを顔の前にかざす姿を
座視している。

その白くしなやかな指を
すり抜け

一瞬で消えた
コンテを追って、

更に、
窓から身を乗り出す。

足が宙に浮くのと、

俺が駆け出すのは、

同時だった。

バランスを大きく崩し、
前のめりに落下して行く。

完全に浮き上がった体を
窓枠に足を掛け体を支え
抱き留めた。

「ヤ〜、怖い。助けて」

地上4階
こっから落ちれば終わりだ。

恐怖心に暴れるので、
今にもこの腕をすり抜けそうだ。

「ヤ〜、ヤ〜…怖〜い」

腕にしっかり力を加える。

「暴れんな、今引き上げっから」

俺の声に反応し、

「慎ちゃん…怖いよ」

体から力が抜けた。

余分な力が掛らない今、
軽過ぎるコイツを引き上げんのは楽勝で、

廊下に座り込んだ俺の胸に包まれ小さな体をより小さくして震えてる。

取り敢えず説教は後だ、
今はとにかく落ち着くのを待て。

自分に言い聞かせる…

が、
俺の眉間には通常の何割増しで、
皺が深く刻まれているだろう。

だから、
コイツを抱き締めない。
優しく背中を擦ることもしない。

コイツが俺を幼馴染みとして、
見てる間は何もしてやらない。

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