幾千の夜を越え
ダルい躰を引き擦る帰路。

「慎輔?」

走り寄る足音に振り向く。

「よぉ茜。何の帰り?」

並んで歩き出す茜は長い棒状の袋を担いでる。

「今日は長刀」

コイツはその他にも剣道に柔道に合気道と…殆どの武道に精通してる。

「お前さぁ、んなに鍛えてどうすんの?」

男勝りに気の強い茜は、
見た目は言うことなしの美少女。

「どうするって?身を守るに決まってるでしょ?」

まぁ、危機感持ってるに越したこたねぇけど…。

んだけ鍛えてると…

「あんま可愛い気なくなると、
男が寄って来ねぇぞ?」

試しに二の腕を掴む。

哀れな幼馴染みに、
溜め息が漏れる。

「ちょっと何よ」

直ぐに振り払われる手。

「堅ぇ〜…女の柔らかさは残しとけよ」

眉を寄せた不機嫌な顔も、

「女は守ってやりてぇって思わせた方が何かと得だぞ?」

頬を膨らめて睨む顔も、

「少しぐらい気が強くても自分より弱い女を可愛いと思えんだよ」

「どうせ私は女らしくないわよ」

すねた口調でさえも、

「見た目は文句なくイケてんのにな…可哀想な奴だな」

俺の足を思いっ切り踏み付け、

「っ痛ぇ〜なテメェ舐めんなよ」

駆け出し振り向き様に、
覗かせた舌にさえも、

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