幾千の夜を越え
今日もモデル上がりに、
通い慣れたコンビニに向かう。

そういや、
週刊誌の発売日だったなぁ…。

ぼんやりんなことを思って、

進路を変えた。

本屋の帰りにも
コンビニって有ったっけ?

別に格段読みてぇ訳じゃねぇが、何もねぇ家には居たくなかった。

こんな無気力な
人間だったっけな…?

「ヤッ…離して…」

不意に耳に届いた、
消え入りそうな声…。

「…葵?」

聞き取れない程微かだが、
聞き間違えるはずがねぇ。

首を回して巡視する。

何処だ?
何処に居る?
頼むもう一度何か言ってくれ

それは、
俺の願いなのかそれとも…。

「ヤッ…止めて…」

意識してた分先程より鮮明に届き

数m先の公園に、
消えていく姿を捉えさせる。

「葵」

叫ぶと同時に駆け出す。

飛込んだ公園で、
隠された姿を求めた。

俺の存在に気付いてる。

そのうえで息を殺し様子を窺ってるって訳だ。

つまりその時点で、
奴等はヤバイってことになる。

どんな些細な痕跡でも見逃さねぇように…。

目と耳に意識を向ける。

唯でさえ人気のねぇ場所で
人目を避けるなら何処だ?
この公園は来たことがねぇが、
この辺りの地理なら解る。

抜け道はない。
確実にまだこん中だ。

ふと目の端に辛うじて引っ掛かる見逃しちまいそうな程淡い光…。

目線だけで辿る、

光ってるはずのねぇ茂みの隅に、

その淡い光はまるで意思を持ち、

俺を呼ぶかの様に息吹を見せた。

現実には見えてねぇ発光なのか、

近付く俺に向こうの出方はない。

息を殺し身を潜めたままだった。

鼻で笑いたくなる様な間抜けな姿だが、

真っ直ぐ俺を見据えてはいるが、気付かれてる素振りを未だ見せず

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