幾千の夜を越え
どうすっかな…。

下手に手出しすりゃ、
巻き添えを食らわせる。

覆い被さるその汚ぇ顔にマジで、回し蹴りを見舞いたかったが…

俺のリーチの長ぇ足は
言わずと知れた凶器だ。

身の上的に物心つく頃には
始めさせられてた護身術が
殊の外俺に馴染み染み付いた。

軍隊あがりの監督のお陰なのか、基本…流派には囚われない無作法なんだが。

其処らのファイターなんかよりも格上だと自負してる。

となると、
頭はやべぇ〜よな?

あの体勢で狙うとすれば、
やっぱchinか…。

相手の顎目がけ垂直に押し蹴り、後ろへ流してやりゃダメージは軽く序でに左右に振り切りゃ瞬時に、三人はヤレる。

此処で問題になるのが、
加減だ。

抜き過ぎりゃ面倒臭ぇが手負いにした分質が悪ぃし。

入れ過ぎりゃ病院送りじゃ…
済まねぇだろうな。

一番の理想は最小の力で、
最大の効果。

奴等が下手に抵抗して無駄に傷を広げねぇ為にも、

悟らせねぇ様に近付き、
素早く決めるしかねぇか。

左右のポケットに
無造作に手を突っ込む。

視線は敢えてその奥を見据え、
一歩一歩慎重に歩みを進め。

幼児の背丈程に生茂る草木を挟み真っ正面。

軸足が地面を踏むと同時に、
迷わず引き上げ、
腰から垂直に蹴り出す。

狙い通り後ろに吹っ飛び、

がら空きの空間に、
突き出た足を前へ振る。

予想通りの衝撃に無理強いせず、

後ろへ回し切り着地を決めた。

扇状に広がった三本…。

一瞬の事に痛みも感じる間もなく

ダラリと開けた口からは
泡を吹いてる。

馬鹿面を仲良く並べて墜ちた。

正直言や、
これで腹の虫が収まる訳がねぇ。

が…長引かせんのは得策じゃねぇことは重々承知してた。

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