幾千の夜を越え
「慎輔家寄ってくでしょ?」

親がハリウッドで撮影に行ってる間、
俺はこの神野家に厄介になるのがガキの頃からの習慣で。

「んっ…」

一階の何だかよく解らねぇもんを売ってる骨董品屋に顔を出し、

「ちっす…お邪魔します」

おじさんに挨拶をして階上の自宅へ上がる。

「相変わらず客入ってねぇのな」

これで商売成り立ってんのが不思議だ。

「う〜ん、お父さんが趣味でやってるだけだから…」

趣味でって…。
お袋さんに逃げられた今コイツ等の生活かかってんじゃねぇの?

自宅の玄関を開けると同時に、

「腹減った〜」

飯の香りに腹の虫が騒ぎ出した。

「お帰りなさい」

俺を笑顔で出迎える彼女に
心底癒された。

「慎ちゃん茜と一緒だったの?」

「違うわよ。偶々帰りに会っただけだから」

階段を昇り部屋へ向かう茜に、

「お前ちょっと言い方気を付けろって」

忠告する。

「慎ちゃん…」

案の定茜のキツイ言い方に
涙を溜めてる彼女を
優しく引き寄せる。

「気にすんな葵。俺がからかい過ぎっから虫の居所が悪かっただけだ」

葵と茜は双子姉妹だけど、

見た目はマジにそっくりで
時々茜の仕草や表情に惑わされる

中身と言えば…

葵はどっか抜けてて危なっかしい

流れ出した涙を拭ってやった肌は

白くて柔らかくて滑らかで…。

ふわふわと綿菓子のような葵は…

甘ぇ〜んだろうか?

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