幾千の夜を越え
神野家に並んで歩く帰路。

漸く俺の想いが届いたことで、
繋いだ感触は今までとこんなにも変わるものなのかと驚かされる。

だが…
そんな俺の感情の変化に気づきもしねぇで無邪気に笑う葵は恐らく天然の小悪魔なんだと思い知らされる。

例えば今さらだが、

普通の女なら…
マジに好きなのか…
いつから好きなのか
なんてくだらねぇ質問
聞きたがるのだろうか?

そんな低俗な会話
普段の俺なら返事はしねぇだろう

ってか…

出逢った瞬間から惚れてた…

なんて死んでも教えらんねぇけど

恐らく葵は、
聞くこともしねぇだろうな。

俺に興味がねぇのか、
余程自信があんのか…

実際は…、
十中八九間違いなく
唯の鈍感なんだろうけど。

未だ俺達は始まったばかりなんだ今さら焦ったところで何が変わるわけでもねぇしな…。

元々長期戦は覚悟の上だ。

今度は葵の恋愛ごっこにでも、
付き合うか…。

それでもまだヒーローごっこより全然堪えられるさ。

キスぐらいなら出来る。

さっきも抵抗はなかった。

そんぐらいなら…、
葵も解ってるはずだ。

その先は…、
葵が目覚めて、
覚悟の出来たとき。

…今のうちに、
DVDでも買い溜めしとくかな?

駄目だ。

そんなの万が一葵に見付かりでもしてみろよ…。

寧ろ、
今のうちに部屋の雑誌処分しねぇとマズイんじゃねぇのか?

待てよ、
確かこの前俺がその類いを見てること教えてんじゃねぇか。

ってか、
見ねぇ方がヤバいって言ったんだけど…。

なら、
堂々と見て問題ねぇのか?

男の悲しい性の所在について
一人苦悶の表情を浮かべる俺に、

「慎ちゃん?」

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