幾千の夜を越え
終始無言で食卓を四人で囲む。

不機嫌丸出しの茜。
俺の様子を窺うおじさん。

二人の目の前で…
借りてきた猫状態の俺。

その隣で…
唯一人状況を把握出来てない、
ご機嫌な葵。

空気を読めない葵だけが時々、
皆に声を掛けてる。

「慎ちゃんお代わりは?」

葵に差し出された手に

「あっ…じゃあ…」

茶碗を手渡す。

こんな時でもやっぱ可愛く見える俺は相当やられてる。

息苦しいだけの食事が終わり、
葵が片付けに向かうのを見計らいおじさんに話し掛けられた。

「ちょっと良いかい?」

指差す方は、階下…。
つまりおじさんの趣味の店だ。

無言で頷き後に続く。

店に戻るなり
俺は深々と頭を下げた。

「すみません!
誤解してると思うから言っとく。まだ葵に手は出してないから!」

黙ったまま書棚に向かい一冊の本を手にする様子を目で追いながら続けた。

「あの…これも先に言っとくけど俺、葵と付き合います。
葵のことはマジに大事に思ってる絶対葵を泣かせる様なことしねぇから…おじさん?」

手にした本を差し出して説明を
始める。

「慎輔君ぐらいの年齢には古文は興味が無いのかもしれないが…。此れは君達にとってとても役立つことが記載されてる実際に行われていた祀りという名目の…神殺しの歴史だよ」

手にした故事は複製された物ではなくそれ自体が価値の在る文語で書かれた書物で

何百年という月日は感じられたが大切に保管されていることも同時に伝わる代物だ。

「古文の文語そのままだからね…読み難いとは思うが慎輔君なら、読めるから」

それを見つめてもおじさんが何を言いたいのかはさっぱり伝わって来なかった。

「必ず必要になる日が来るから」

それ以上は何も言わなかった。

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