幾千の夜を越え
教室に入るなり

「おはよう右川君!」

キンキンと耳を刺す声に囲まれ。

「今日転校生が来るんだって!」
「この時期に珍しいよね?」
「うちの組一番人数多いのに…」
「でも良い男だったみたいよ?」
「ならアンタそっちにすれば?」
「私は何が遭っても右川君一筋」

必要のない情報に朝からぐったりする。

オマケにああでもこうでもないと言い合いを始める始末だ。

悪いが俺は何百年の間も
葵しか見てないんだよ。

「おい慎輔相変わらずモテてんな羨ましい限りだぜ!」

悪友が女の垣根を掻き分け俺の席まで辿り着く。

「……」

無言の俺に

「何だよ冷めてんな無反応かよ」

微苦笑を浮かべた。

「否…何か引っ掛かったんだけど何だったのか…」

今朝からだ…。
頭に靄が掛かった気がして仕方がない。

「柄にもなく断食して頭に回っちまったんじゃね〜の?」

言うが速いか奴の手が
俺に伸びる。

「止めろって!」

慌て奴の手を外すが、

「良いよな…。お前には足りないもんがねぇのか?」

その手を見つめボヤキ出す。

「此れで何人女を鳴かせたんだ?男の敵め!」

軽く目眩を起こしながら
溜め息を吐く。

「どうやればこんなに育つんだ!教えろ!」

ジロッと目玉だけを向ける奴を、

「知るかボケ!」

足蹴にする。

大体葵に望まれなきゃ
ンなもん意味ねぇんだよ。

「お前…女出来たんだろ?」

俺の問いに奴が胸を張る。

「嗚呼!お前の不参加のお蔭で、この前の合コンでGETしたぜ!
お前には負けるけどな俺だって…そこそこのモン持ってんだぜ?
デカさの無い分テクニックカバーで鳴かせてんだ!」

途中珍しくハニカム奴を再び
足蹴にする。

「気色悪ぃんだよテメェ!
女とヤったの自慢すんじゃねぇ」

< 42 / 158 >

この作品をシェア

pagetop