幾千の夜を越え
今朝の目覚めから
どうも体が重い。

最初は葵を抱いて寝たからかとも思ったのだが…。

肉体的と言うよりも、
精神的にと言うか…。
もっと別の心肝深く、
身体中1つ1つの細胞が
張り巡らされた神経が
ビリビリと痺れる感じだ。

言い様の無い困憊感に支配される俺の躰を知ってか知らずか…。

嘲笑うかの様に
天気予報を覆す大雨。

雨空を憎らしく見上げる。

「雨って私は嫌いじゃないんだ。何と無くだけど…守られてる気がして安心するの」

葵が習って見上げはにかむ。

そういや、
昔からんなことを言ってたよな?

普通は嫌われる雨。
雨の日には陰の気が充満して、
地上に霊道が重なるとか…。

俺には凡そ縁の無い話だが…。

どっから来る根拠なのか
その類いの話に俺は絶対の自信を持っている。

見えないからでも
信じないからでも無い。

寧ろ逆だ。

ガキの頃から
人の感じ無いモノを感じ取り…。
見えないモノを目に映す…。

だが一切の恐怖心も無く。

やり過ごして来ていた。

俺に危害は加えらる事が出来無いという…自信だった。

「守られてる…ね?」

密かに俺も雨は嫌いじゃない。

理由は葵とは違うが
雨の日は力がみなぎってくる。

が、今日の雨は別だ…。

何故かこの雨が
俺の不調の原因の気がしていた。

「そう言えば前にも今日みたいな降水確率0%の日に雨が降って…、慎ちゃん寝込んだことあったね?ひどい熱だったのに次の日の朝は嘘みたいに元気になってたね?」

「よく覚えてんな…」

いつだったか…。
翌日に学年別水泳大会を控えた日葵が「始まった」と泣き出した。

皆にバレるから見学は嫌だと、
俺も思春期を迎えたヤローどもの好奇の目に葵を曝したくは無く。

中止になるぐらい雨が降れば良い…そう願って前夜空を睨んでた。

< 55 / 158 >

この作品をシェア

pagetop