幾千の夜を越え
「そしたら分かってくれた」

はっ?
納得したのかよソイツ…。

見りゃ、当然って感じで
茜がハンバーグを頬張ってる。

何だよ不抜けヤローかよ。

「脅かしやがって…」

安堵と共に口を吐いてしまう。

「えっ?慎ちゃん心配してくれたの?」

葵はきょとんとした顔で

コイツは鈍いから意味解らねぇだろうな…。

「慎輔は葵が誰かの手に渡るのが心配なんだよ」

茜が横槍を入れやがった。

ずっと幼馴染みとしてやってきた
俺等はそれ以上でも以下でもねぇ

娘を嫁に出す親父の心境ってヤツ

ってことでイケるよな?

テレビのリモコンに手を伸ばす。

「私も慎ちゃんに彼女出来たら
ヤだな…」

葵の一言に、
忙しなくチャンネルを変えてた手からリモコンを滑り落とす。

「なっ、何で?」

何どもってんの俺?
動揺バレバレじゃねぇ?

「…慎ちゃんに彼女出来たら
傍に居てくれなくなっちゃう」

何だよそれ…
俺の傍に居てぇってこと?

「いくら幼馴染みでも他の女の子が傍に居るのは焼いちゃうもん」

眉を寄せた不機嫌な顔で、
頬を膨らめて睨む、

お前に睨まれても、
誘われてる様にしか見えねぇよ。

「慎ちゃんだって彼女にばっかで
私には構ってくれなくなるよ」

見えない相手を想像して、
すねる。

「何?嫉妬してんの?」

俺が得意気に微笑めば、

小さく舌を覗かせる。

解ってんの?

お前のその仕草や表情に
どんだけの男が色情すんのか…

「特定の女は作らねぇよ…」

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