幾千の夜を越え
教室では当然の様に
頭の痛ぇ黄色い声に出迎えられ

それを抜けてもまだ
コイツが居る。

「えらいぴーかんやな…。
ホンマ面白いの右近…。
今日は何が右近を待ってんねや」

左山の質問に溜め息で答える。

「何や…力使いより過ぎて動けんなってんのちゃうやろな?」

話したくねぇ気分で
無視を決め込む。

「情けなぁなってしまいおって…これが克つて右近と呼ばれおった男かいな…そんなんでホンマに尊を守れるちゅうんか?」

又右近に尊かよ…。

ってか、

「尊はお前が守るんだろ?」

左山の言う尊とは
茜のことの筈だ。

だったら何で
自分の女である茜を
俺に守らせようとするんだ?

「ホンマやな?
今の言葉しっかり聞いたで!
尊は俺が今度こそ命に代えて
お守りする!
どんなことがあろうと…」

左山は時々標準語を話す。
違和感なくだ…。

無意識なんだろうが

それは決まって
尊がらみ…。

そこまで左山の気持ちを支配する女は本当に茜のことなのか?

茜じゃねぇなら…

考えたくはねぇが、
それは間違いなく葵ということ。

もし、
左山が葵に出会したら

恐らくは
茜から葵に簡単に乗り替える。

茜と二人で居るとこなんか
見たことねぇからな…。

確かに茜は前と変わらず
武道を続けているが…。

コイツが茜に
そこまで執心してねぇのは
そうゆうことなのか?

ってか、

コイツは茜…尊と
どうなりてぇんだ?

「なぁ左山…
尊とヤりてぇんじゃねぇの?」

その途端
左山の態度が激変した。

「右近貴様…。尊をそんな汚れた目で見ていたのか!」

「汚れた目って…
健全な男の目だろ!
人を獣みたいに言うな!」

「獣の方がまだマシだ!」

「んだと?
テメェも本当はヤりてぇって
思ってたんじゃねぇのか!」

「貴様…まだ俺を…
尊を侮辱するのか!」

< 64 / 158 >

この作品をシェア

pagetop