幾千の夜を越え
静まり返り動向に注目が集まる中

ガラッ
っとドアを開ける音に
注意が背く。

「ほら〜席着けよ…」

担任の呆れ声にバラけ出したが

「どうした左山?」

立ち尽くし俺を見下ろしたまま

「早く席着け。HR始めるぞ…」

ヤツの言葉も届かず。

「先に言っておく…
あの日右近が俺を出し抜いてさえいなければ俺は尊をお救い出来ていたんだ!」

左山は憎々し気に俺を睨み付け

「おい左山!何処に行く気だ」

担任の制止を気にも止めず教室を悠々と後にした。

「何だアイツ?
具合でも悪かったのか?
右川何か聞いてるのか?」

何か聞いてるのかって…。
俺の方が聞きたいくらいだ!

声にならない叫びも
虚しく頭の中で木霊すだけで

「いや…何も…」

そう呟くのが精一杯だった。

「そうか?
まあいい…後で職員室に来る様に伝えておけよ」

担任の後ろ姿を眺め

そのまま崩れ落ち机に突っ伏す。

いったい何だってんだよ!
俺とアイツはどう関係してんだ!
右近ってのは誰だよ?
尊を救えただと?
それが俺に何の関係があんだ!

知らねぇんだよ!
右近も尊も…。

俺にとって大事な者は葵唯一人!

それ以外何も欲しくねぇんだよ!

勝手に現れて掻き乱すんじゃねぇ俺の…俺達の…平穏な日々を…。

もう二度とあんな思いをさせたくないんだ…。

頼む左近聞き分けて欲しい。

……。

ちょっと待て?

まただ…またこの感覚…。

気味が悪ぃ…。

もう二度とだと?
あんな思いってどんな思いだよ?

左近…だと?
聞き分ける…だと?
んなの俺の台詞じゃねぇ。

普段の俺なら絶対言わねぇ台詞…

俺の中に
何か得体の知らない不穏な陰が…

まさかな?

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