幾千の夜を越え
朝起きると頭には霧が掛かり…
夢を見ていたのかさえ記憶に無く
何故か倦怠感だけが残る数日。

付け根に出来た痣だけはそれを
誇示するかの様に色濃くなる。

ベッドサイドに閉じられたままの古書の存在も俺を不安にさせる。

確かに読み解ける
尊…右近…左近…。

それが何より不気味で仕方ねぇ。

茜にしろ左山にしろ
偶然同じ古書を目にしただけで

別段
気にも止める必要もねぇ。

そう思い込みてぇのに…

あの古書は
おじさんが大切に
管理してた物で

仮に…
茜が目にする事があったとしても左山には不可能な筈だろ?

それを否定する自分も居る。

いや…
あの古書が一冊しかねぇとは
誰からも聞いてねぇんだよな。

例えば、
もう一冊あったと仮定してだ
その一冊を左山が手にしてる。

そう考えれば…
そう考えるのが普通だろ?

左山は恐らく入り込み過ぎた。
現実と書の区別が出来てねぇだけ

左山のあの力…。

唯の偶然だ。

何度も何度も…
堂々巡りを繰り返す。

左山が何者なのか…。
尊とは本当に茜なのか…。

俺は…右近なのか…?

おじさんは何故…
俺にあの書を託したんだ?

あの書が俺の物って…
意味が解らねぇんだよ!

俺の不安も
全てが葵に関わる事だからなのか思い出そうと必死にもがき続け。

やっぱあの書を全部読み解くしか方法はねぇんだよな…。

最終的に行き着く答えは決まっているにも関わらず…

俺はまだ
その頁を開くことが出来ずにいる

知ったら…
何が変わるんだ…?

葵に…
俺達の関係にどう影響するんだ?

やっと手に入った宝物を
誰にも盗られたくなくて
隠して置きたい…けど…
見せびらかしたい…けど…
誰にも見せたくない…。

そんなガキのジレンマの様に
渦巻く感情…。

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