幾千の夜を越え
振り返る間でもなく
俺の目前へと悠然と立ち回り。

「神様は耐え得る者にしか…、
その試練を与えないなんてのは、あれは嘘だからな…」

どうして移動しているのか、
その動きは奇異的で…、

凡そ同じ人間とは思えなかった。

「この世に神様は居ない?
それも実際には不適切だろうな」

気配を感じなかったからか?

違う、
感じなかったではない
今も…感じられない。

「神様は存在する。
残念な事に個人個人を見てくれる程に時間を持て余してる訳でも、御人好しって訳でもないって話」

人が動く上で
確実に変わる気の流れも
全く感じられなかった。

「だから俺は良いと思うぜ?」

そしてまた同じ言葉を繰り返す。

「お前が現世に産まれ来た意味を受け入れる度胸もないなら…、
弱虫らしく尾を丸めて寝てろよ」

隙もなく
間合いも取れず

「何れにしろ今のお前のままならこの先いくら足掻こうとお前の…大切な者は守れないだろうな」

絶対的な存在に
戦わずして敗北する。

「本気の覚悟が出来たなら、
もう一度此処へ来いよ。
お前の前世に対面させてやる」

「俺の前世は…
雷神の落とし子の右近だ」

「雷神の落とし子ね?」

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