幾千の夜を越え
「ふん」っと鼻先で笑われ

「鳴神っていえば…
雨を司る神様だったかな?
なら、降らして見ろよ今!」

意図的に雨をコントロール出来るだけの力を持たない俺を知ってか

「右近だって認めるだけなんて、何の意味も成さないんだよ」

挑発を止め冷淡に続ける。

「お前は重要な事を忘れてるぜ?思い出せよ?記録に記されてない記せなかった右近だけが知ってる事実をな!」

右近だけが知ってる事実?
記すことの出来なかった真実…。

「俺を此処へ呼び寄せたのは、
鳴神でもない右近でもない
他でもない右川慎輔お前だよ!
自覚しろこの空間は現世と前世の狭間で揺らいでる。
この空間を融合させたのも慎輔!お前なんだよ!」

景色が揺らめき
過去の残像と現実の空虚を重ね。

「少なくとも…この空間は右近にとって謂れのある場所なんだろ?過去、俺は存在して居なかった。付いてるな現状俺は存在してる」

不敵な笑みを残し
現れた時同様に忽然と
消え失せる。

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