ジュエリーボックスの中のあたし
「アハハハハハ。」


突然笑いだしたあたしにユキは体を離し、驚いたようにあたしを見た。


初めは戸惑っていたユキだったけど、笑いがとまらないあたしを見て、終いには彼も大声で笑いだした。


あたしたちは何故か笑いが止まらなくなり、2人して床に倒れ込み時間がたつのも忘れ笑い転げた。



そうして散々笑った後、ユキは優しくあたしに微笑みかけ、笑いすぎて涙目になっているあたしの目を指で優しく拭った。


「まぁ、いいや。今日ミリやっと笑ったし。こんな可愛い笑顔見せられたら俺も怒りを鎮めるしかないや。」


そうして何故か、最初怒っていたのはあたしの方だったはずなのに、彼があたしを許す形となってこの騒動は幕を閉じた。


結局あたしの方は怒りを持っていく場がなくなり、うやむやなまま胸に納めた。


実際今となってはどうでもよくなっていたし、あれはただのヤキモチであり八つ当たりだった。


ただしかし、納めたということはいつかまた何かの拍子に、溢れ出すことがあるということ。


機嫌を直しいつもの様子に戻ったユキをぼんやり見ながら、あたしは加奈子があたしとすれ違いざま見せた、あのなんとも勘にに障るほくそ笑んだような表情を思い出していた。


「ミリ早く風呂入ってその匂い落としなよ。」


洗面台の方から彼のなんとも陽気な声が聞こえた。
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