最後の恋
「荷物、持ってきた」

戻ってきた、課長の手には私のバック。

「部長にも、言ってきたから・・・。行くぞ・・」

そう言うと、課長は私の腕を掴んでお店を出た。

送るという課長に、大丈夫だから戻って下さいと、何度も言ったのに、課長は私を離さなかった。

掴まえられたままでタクシーに乗り込む。

ここに来るまで、課長のペースに合わせて歩いてたので、少し息が上がってる。

それに、落ち着いていた気持ち悪さも、よみがえってきた。

課長と一緒にいるときに吐く訳にはいかない・・・。

私はタクシーのドアにもたれて目を閉じた。

グイッ

目を閉じるとほぼ同時に、体が急に引っ張られた。

ビックリして目を開ける。

「えっ?」

私は、課長に寄りかかっていた。

「気持ち悪くなったら、早めに言って。停めてもらうから。」

課長から離れようと、体を起こす。

と、同時にまた引っ張られた。

「こうしてろ。この方が楽だから・・・。」

課長は私の肩に手を回し、起きられないようにしてる。

ドキドキ・・・。

課長の胸に近いせいか、課長の鼓動が聞こえる・・。

いつ以来だろう、男の人の鼓動をこんなに近くで感じるのなんて・・・。

私は課長の鼓動を感じながら、目を閉じた。




その音が気持ちよくて、徐々に私の記憶も薄れていった。
< 12 / 97 >

この作品をシェア

pagetop