最後の恋


「おはようございます」

次の日。疲れ気味に出勤。

昨日、めいいっぱい働いて、家に着いた頃には日付なんて変わってた。

でも、今日も打ち合わせが入ってて、休みはまだまだとれそうにもない。


「みんなー、おはよう。ちょっと、いいかな・・・。」

営業部長が男を連れてやってきた。みんなもぞろぞろと部長の下へ行く。

「紹介します。今日から、ウチで働いてもらうことになった長谷君だ。みんなよろしくなー。」

「長谷 陽輔です。よろしくお願いします。」

男が頭を下げる。

“『よろしくお願いしまーす』”

みんなも頭を下げながら、声がそろう。

「浅姫さん、かっこよくないですか?長谷さんって。彼女いるんですかねぇ~。」

挨拶してるときに、たまたま私の隣にいた坂野さんが言った。

ってか、坂野さん? 仕事より、男ですか?

坂野さんは今年4月に入った新人さんで、入社して来た時から、ホテルの男の人をチェックしてる。

確か、最初にターゲットになったのは私と同期の直哉だったはず・・・。

坂野さん、まずは仕事しようよ・・・・。

そう思いながらチラッと、男を見た。

確かに、格好は・・良い・・・・かも。

顔立ちはっきりしてるし、髪もさらさらだし、身長はたぶん185くらいはありそう。

おまけに着ているスーツもなんだか高そうだし。

部長となにやら話している笑顔には真っ白な歯が見える。

「・・・・・・」

辞めよう。ばかくさい。

私は男観察を辞め、目をハートにしている坂野さんの横を通り過ぎた。














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