最後の恋
今日は、近くの“銀平”という居酒屋にした。

ここは、何度も来てる。

あまり大きくないお店だが、カウンターと個室があって、マスターの料理も美味しいと評判だ。

私たちは個室に案内された。





「おつかれ~」

「お疲れ様です~」

生ビールで乾杯する。

課長の前でも、遠慮なくゴクゴク飲む。

「良い飲みっぷりだけど、そんなに飲んで大丈夫?」

課長は私の顔を見て笑いながら言う。

そうだ。課長はこないだのが本来の姿だと思ってるんだ・・・。

「ス、スイマセン。あの日は体調が悪かったみたいで・・・。」

言い訳みたいだけど、きちんと説明する。

だって、本当に初めてだった・・・。

酔って人の前で寝ちゃうことも、飲み過ぎて気持ち悪いはずなのに、課長の胸の中が気持ちよかったのも、会ったばかりなのに、なんでかホッとしちゃってたことも・・・。






それから、私たちはいろんな話をした。

「ところでさ、その課長っての辞めてくれない?」

「えっ?」

「だって真野は俺の直属の部下じゃないし・・・」

「でも・・・、」

「ここ、職場じゃないし、役職名で呼ばれるのは・・・」

そうだよね。

確かに、ホテルを出てまで、“課長”ってのはね・・・

でも、なんて呼べば?

「・・・・・」

「好きなように、呼んで良いから・・・」

課長は、私の表情を読んだかのようにそう言った。



















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