支配者
「ちょっと待って!」

グイッと腕を捕まれ、わたしは振り返った。

「ん? どうしたの? あっ、途中まで一緒に帰る?」

「…そうだね。話したいこともあるし、一緒に帰ろう」

「うん!」

わたしはランドセルに手帳を入れて、上機嫌で鼻歌まで歌ってしまう。

学校を出たところで、彼が声をかけてきた。

「驚かないんだね?」

「何が?」

「イジメ。目撃しても、全然動じない」

柔らかな物腰で、彼は言った。楽しそうに。

「動じることのことかしら?」
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