水色の運命

｢そうですか｣

話が終わると男は
それだけ言った。


少し黙りこんだ後


｢素直ですね｣

そう言いながら
目を細めて海をみた。


｢汚いものを汚いと分かっているのなら
成長できますよ｣


何と返していいか分からないノンに男は


｢世の中そんな人間ばかりと違いますよ。
世界は広いので
きっと気を許せる人間が現れますよ｣


｢ありがとうございます｣

そのノンのお礼は
社交辞令の言葉ではなかった。


どん底に突き落とされていたノンに
明るい希望をみせてくれた男に対する
心からのお礼だった。



ウデの時計をみて
男は立ち上がった。


｢ほんなら時間なので
行きます｣


｢あの本当に
ありがとうございます｣

深々と頭を下げるノンに男は笑顔で手をふった。


もう一度ベンチに座り
ノンは考えた。


さっきまでは
汚いものをどう浄化しようか考えていた。


でも今は
自分がどうやったら
生まれ変われるかを
考えていた。