【企画】落下した青で窒息死


涙ぐましいほどの説得の末、会う約束を取りつけたこともあった。


けれど、待ち合わせを二時間過ぎても彼は現れなくて、携帯も繋がらなくて、

心配して彼の家まで迎えに行けば、そこは、もぬけのから。


なんと彼は海外に行っていた。


仕事じゃなくて、完全にプライベートな旅行のために。


アーティストの観点からしてみれば、それは感性を磨くためだとか、いろんな理由があるのかもしれない。


彼が行動を起こす動機のすべては、いい写真を撮るため、

ただそれだけだというのを私はよく知っている。


でも、言葉は大切なのだ。


伝えてくれないと、分からない。


私は彼のことが好きだから、ちゃんと理解したい。


そう何度も伝えたのに。


結局、彼は理解してくれなかった。


分かり合う、その必要性さえわからないかのように首をかしげ、

私の話に飽きると、お気に入りらしいこの手を嬉しそうになで始めるのだった。

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