【企画】落下した青で窒息死
小脇に段ボールを抱えている彼は、そこから何枚もの写真を掴んでは、私へと降らせて寄こす。
一枚一枚違うけれど、でもどれもみんな空や海が写っている、青い写真だ。
「どうして泣いてるの、お嬢さん」
彼は写真を降らせながら、問いかける。
どうして、って。
「そっちこそ、どうしてここにいるの」
驚いた私は、それしか言えない。
今、彼が目の前にいるなんて、信じられない。
だけど彼はやっぱり、当然、といった顔で言う。
「だって、前に二人でここに来たから」
二人でここに?
「そのときは、夏だったけど」
私は記憶を手繰り寄せてみる。
そういえば、以前彼と北の海に出かけた。
そのときの海が、ここだったなんて。
先ほどの既視感に納得しつつ、前とは印象が違いすぎることに驚く。
知らぬ間に思い出の場所にやって来ていた。
この偶然は、とても運命的。
だけど、以前一緒にここに来たことが、今私がここにいると分かった理由にはならないと思う。
それが充分な理由になってしまうところが、彼らしいといえば彼らしいのだけれど。