【企画】落下した青で窒息死
写真は降り続く。
その中、あのね、と彼は切り出した。
「俺、ずっと世界を回ってたんだ。
七つの海を制覇しなきゃいけなかったから」
こんなときに、また突拍子もないことを言う。
「なんのために。海賊王にでもなりたいの?」
「ううん。……あ、うん、近いかも。でも違うっぽい」
「どっちなの」
「海賊王じゃないんだけど、世界を知らない男には到底果たせない使命っていうものがあって、
それを果たすために、七つの海の写真を撮らなきゃいけなかった」
ほら、これ全部そうだよ、と彼は言う。
「そう、大変だったのね」
私は半ば呆れながら、それを一枚ずつ拾って眺める。
たしかに、日本では見られない街並みや植物が映りこんでいたりする。
胸が空くほどに、それはみんな美しい。
「うん、大変だったよ。最初から大変だった。
海って言ったら地中海だと思って、まずシチリア島に行ったんだ。
でも、帰ってきて知ったんだけど、地中海って七つの海じゃなかった」
「バカね」
「うん、バカだ。
でも地中海は天国みたいに綺麗だったし、魚がおいしかったから、行ってよかった」
「……よかったね」
「うん、よかった」