悲しき恋―時代に翻弄されて―
序章
私は時々思い出す。
おばあちゃんが話してくれたご先祖さまの話。
初めて聞いたのは幼稚園園児くらいだっただろうか。でも、鮮明に記憶している。
だってその話は、悲しくて、切ない話だったから。
電気もない、コンビニもない、ガスもない、勿論ケータイもない。なんにもない時代。それだけで信じられないのに、そんなこと…今ならありえない話。
そう、今から20年前に聞いた、話―。