悲しき恋―時代に翻弄されて―
千与はお一に掛ける言葉を見付けられず、ただ俯いた。

想像を絶する、悲惨な過去。戦で夫を失い、貧困で子供を亡くした彼女。
彼女だけでなく、これから何百年も後の世にもその悲しい物語は受け継がれた。その、悲劇は絶つべきなのにそれを繰り返す世の中は皮肉に満ちている。

一体いつになれば、人はその惨めな行為に終止符を打つのだろうか。

未来永劫、訪れはしないのだろうか。

平和、それは絵に描いた餅なのか。それでも、千与は平和を望む。

武家の人間でも、―いや、だからこそ戦を憎む。
それは間違っていると、一刻も早く、皆に気付いてほしい。
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