悲しき恋―時代に翻弄されて―
「由親…」

優しい心を持つ武士。そんなところも千与は大好きなのだが、いつか離れるのならいっそ突き放してほしい。

この恋心を、消し去るほどに。

そう彼女は思わずにはいられなかった。彼の優しさが、残酷だった。


「千与っ!」

「母上…」

千与に駆け寄り、母はその頬を叩いた。

「どれほど心配したことかっ!」

「…母上、申し訳もありませぬ。」

「無事か?」

「はい。」
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