【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ
「……バイク」
乗ると心臓にすら爆音を響かせる、赤い車体。
なのに私は、毎朝気付かない。
会長が私の家の前に到着する音に、全く。
このバイクの走行音って、家の壁くらいでそんなに聞こえないものとは思えないのに。
「会長は……」
「早く乗れ」
門からゆらりと背を離し、私の質問の意図すら知ったかのように、秋月会長は私から顔をそらす。
先に行って下さいという言葉は、やっぱり聞こえてなかったのか。
心の中で溜め息をつきながら、ちらりと時計をみる。
そろそろ母も仕事へ行く時間。
いつまでもここに立ってるわけにいかないし、
私はそっと扉から離れた。
それをバイクに乗る了承ととったのか、
無言でヘルメットを投げられる。
落とすわけにもいかないと律儀に受け止めた私の手のひらが、
少しジンジンした。