【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ
聞き分けのない心
その翌日からふっつりと、秋月会長のバイクも自転車も、私の家の前に止まらなくなった。
少し前の状態に戻っただけなのに、この空虚感はなんなんだろう。
視界の良くなった前方が、
かろうじて静止はしてない程度に流れる景色が、
胸を締め上げる。
「……むしろ清々するし」
口にして言い聞かせてみたけど、
思った程の効能はもたらしてくれなかった。
学校に向かうカラダも気も重く、
俯きがちに歩を進める。
半ば無意識で、何度目かの溜め息をついた時、
後ろから軽快に声を掛けられた。
「結香チャン」
「……おはようございます」
後ろから前に回ってきたのはナツキで、私は無表情に挨拶を返した。
すぐに愛想良く挨拶出来る程、器用じゃない。
警戒心ゆえ多少つっけんどんになってしまったけど、あまり気にしてないのか、
ナツキはニヤリと笑って寄越す。
「今日はアキと一緒じゃないんだな」
心なしか可笑しそうな声に、私はむっつりと黙り込んだ。