【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ
不法侵入だ、とか騒ぎ立てるのも許されないくらいの、険悪な雰囲気を垂れ流す秋月会長は、周りの空気までも枯らしている。
おかげで酸素が確実に足らない。
ぱくぱくと、エサを求める鯉のように口を開け閉めする私に、彼はグッと顔を近付けた。
「『なんでもない』かどうかは、俺が決める」
近い!
近いよ!!
混乱状態に陥った私に、有無を言わさぬ空気をまとい、答えを強要をしてくる。
「言え」
蛇に睨まれた蛙の気持ちって、こんなだろうか。
目から何かが入り込んで、心臓をギュッと握り締めている感じ。
抗うすべなんて皆無に等しいけど、
こんなにまでして訊かれるような大層な事でもない。
『そんなことか』と言われるに決まってるし、
そのときの秋月会長の顔を想像するだに身震いがする。
だが言わないといつまでもこのままかもしれない……
それは困る。非常に困る。
帰らないならまだしも、この至近距離は心臓に悪すぎだ。
いまこうしてる間にも、私の寿命はどんどん縮まっていく。
ええい!
どうにでもなれ!!
私は早口でまくしたてた。
「私が飲んでた紅茶を、飲んだじゃないですか……間接キスだなって思っ──」