【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ
「君、名前は?」
「あ、たし……ですか?」
突然話題を振られ、私は沢山のまたたきをしながら、ユキトさんの目をまじまじと見てしまう。
「オイ、なんでソイツの名前なんて──」
「名前は?」
焦ったような秋月会長の声を遮って、ユキトさんはにこやかに私の名前を聞き出そうとする。
その甘い微笑みに、私は口を動かすことを忘れ、暫し放心状態に陥りかけた。
秋月会長の舌打ちがなければ、そのままアホみたいに立ち尽くすだけだったろう。
ハッと我にかえった私が名乗ろうとする前に、秋月会長が更に会話へ割って入ってきた。
「藍川、だ」
「いや、アキに訊いてないし」
何故か私の代わりに名を言った秋月会長に対し、ユキトさんが笑いを抑えている。
「藍川って、名字だよね? 名前は?」
「ウゼェ」
私に答える隙を全く与える事なく、秋月会長は瞬時に簡素な言葉を放った。
「オレは彼女に、名前すら訊いちゃいけないの?」
もはや笑いを抑えることを放棄したのか、クスクスと笑いながら、肩を震わせるユキトさん。
秋月会長は仏頂面で、問い掛けに答えることすらせず、ユキトさんの腕を強引にひいた。
「くだらねぇ……行くぞ、遅れる」