【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ
相手が怯んだ隙に、秋月会長は私の腕をとり、強引に駆け出す。
後ろで悪態喚き散らす声がするけど、追っては来てないみたいだ。
息が上がって苦しくなった頃、ようやく腕を掴む手のちからが弱まった。
「……帰るか」
秋月会長はチラリと私の様子を見て、そう言った。
このままどこか行くような気分ではなくなってしまったから、秋月会長の言葉は妥当ではあるのだけれど。
なんだか少し寂しい、だなんて、ちょっとした気の迷いがあって。
すぐには言葉を返せなかった。
息を整えるふりをして、少し間を開けたあと、小さく頷く。
それを見たらしい秋月会長が、呟くように言った。
「……行くぞ」
すっと伸びた手が、躊躇いなく私の手を握る。
すぐに私へ背を向けて歩き出したから、表情は見えない。
会長からも、私の表情は見えない。
真っ赤に染まった私の顔も。
引かれた手が、熱かった。