【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ


相手が怯んだ隙に、秋月会長は私の腕をとり、強引に駆け出す。


後ろで悪態喚き散らす声がするけど、追っては来てないみたいだ。


息が上がって苦しくなった頃、ようやく腕を掴む手のちからが弱まった。


「……帰るか」


秋月会長はチラリと私の様子を見て、そう言った。


このままどこか行くような気分ではなくなってしまったから、秋月会長の言葉は妥当ではあるのだけれど。


なんだか少し寂しい、だなんて、ちょっとした気の迷いがあって。


すぐには言葉を返せなかった。


息を整えるふりをして、少し間を開けたあと、小さく頷く。


それを見たらしい秋月会長が、呟くように言った。


「……行くぞ」


すっと伸びた手が、躊躇いなく私の手を握る。


すぐに私へ背を向けて歩き出したから、表情は見えない。



会長からも、私の表情は見えない。

真っ赤に染まった私の顔も。



引かれた手が、熱かった。


< 274 / 299 >

この作品をシェア

pagetop