【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ

「ちょっと格好良かったかも」


姿が見えなくなったことで、少し大胆に、口にしてみる。


さっき囲まれたとき、怖くて身が竦んだ自分を、心の中から追い払ってしまいたくて。


何か他のことを考えていないと、不安が押し寄せてくるから。


このあたりがテリトリーだったとしたら、またあんなことがあるんじゃないか。

そのとき私は逃げられるだろうか。


「お礼出来なかったなー……ちゃんと名前と連絡先きけばよかった」


取り返したケータイを見る。


意図しないままボタンに指が触れ、暗証ナンバーの入力を促す文字が、ディスプレイに表示された。


ケータイを取り上げられたとき、秋月会長を呼び出せ、と脅されたけど、元々彼の連絡先なんて入ってない。


高校に入学してすぐおざなりにアド交換したクラスメイトが数人と、あとは中学の友人と家族くらい。


いまの救世主と同じで、秋月会長も、私からの連絡手段はなく、相手からの連絡手段もない。


ケータイはいつでも誰かと繋がれる筈なのに、その誰かのなかには、お互い入っていなくて。


だけど、ケータイの中に入っている、家族以外の誰よりも、会ってる時間は長い。


「……へんなの」