【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ
ガシッと腕を掴まれた。
「……っ!」
声が出ない。
喉の奥で絡まって、出すことも飲み下すことも出来ず、息が詰まる。
ぐい、と強い力で引かれ、足を踏ん張るよりも早く、バランスを崩される。
あ、と思ったときには既に、地面に倒れる寸前だった。
そのまま顔面からアスファルトに突っ込まされるのかと思いきや、すんでのところで腕を支え上げられる。
地面にうつぶせに倒れ込む代わりに、脚が持ち上がった。
誰かが、私の脚を持ったのだ。
ふわりと風に舞うほどに軽くはない筈の私のからだが、空(くう)へと持ち上がっている。
数人がかりで抱え上げられたのを知り、私は焦った。
「やだ、おろして……!」
漸く出るようになった声は、頼りなく空気に霧散してしまう。
「連絡先なんて知らないってば……!」
そう言っても取り合ってもらえず、私はからだの中の温度が一気に下がった。
短絡的思考の持ち主なら、そこを突けばなんとかなるかもなんて、甘かった。
この分じゃ、『知らないなら仕方ない』なんて許してくれそうにない。
無茶苦茶に暴れてみたが、脚を握る手からは解放されたものの、腕をガッチリ掴まれ、結局また担ぎ上げられる。
「ほんと、知らないんだったら!」
そう言ったとき、
黒い車が見えた。