【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ


――なんで私がこんな目に遭わなきゃならないの。

なんで。
なんで。


誰へともなく、頭の中でぐるぐると言葉が回る。


――私、何か、こんなことになるような悪いこと、した?


そもそもなんで私はこんな状況に陥ってるんだろう。


暴れに暴れて、頭の中ではぐるぐると言葉が回って、もう何がなんだかわからなくなっていた、そのとき。


車内の空気に、揺らぎが生じた。


最初は、運転席に座っていた男の、「あれ?」という呟きだった。


誰もその呟きを拾うことはなく、私も聞き逃していたように思う。


なんとなく耳には入っていたけど、何が「あれ?」なんだろうかと考えるまでには至らなかった。


次に運転手がぽつりと落とした言葉は、先ほどよりほんの少しだけ、明瞭に頭へ到達してきた。


「気のせいじゃ、ないよなぁ……」


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