【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ
車内に乗っていた数人は、またしても誰も気に止めることはなかったようだが、今度は運転席の男が、疑問を口にした。
「なぁ……あのライト、この車をつけてきてる気がすんだけど」
話しかけられた内容が気になるものだったのか、私の隣の男が返事をする。
「サツか?」
「いや、バイクだし……でも白バイじゃなかったな。暗っぽい色のやつ」
「あーそういや、さっきっからバイクの音するなあ」
確かに、バイクの排気音のような音がしていた。
気付かなかったのが不思議なくらい、聞こえてくる。
運転席の男から、ルームミラー越しに視線を送られたのか、私の隣にいた男が、確認する気もなさそうな億劫な仕草で、ぐるりと後ろを振り向いた。
「……暗っぽいって何色だよ。……っつか、どれのことだ?」
「先頭走ってるやつ。最初は一台だったんだけど、なんかどんどん増えてんだよ」
「つけてきてるんじゃなくて、ただこの道が通るルートってだけなんじゃねぇのか」
「ならいいんだけど……なんか流してるだけに見えねーっつーか」
「なんだ、怖じ気づいたか」
「そんなんじゃねーよ」
言い争いとまではいかない応酬をしながら、車は目的地についたようだった。