【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ
車が止まったのは、お約束的な廃工場。
フロントガラスの向こうは、車のライトだけではわからなかったかもしれないが、後ろから照らすバイクの群れで、扉の色かたちまでわかる。
男達は後ろのバイクを警戒しているのか、車から降りる気配はない。
もしかしたらここが最終地点ではないのかもしれないが、当面ここから車を動かす気もないようだった。
「こんなとこ、ふつーは止まらねーよな……」
「さっきからいちいちなんなんだよ、テメーは」
「いや、だって、おかしいだろ。こんなとこにさ……」
「うっせえ」
運転席の男がバイクを不審がるのを、私の隣の男はしきりに片脚だけ揺らしながら、吠えるように声を荒げて黙らせる。
怯え盛んに吠える小型犬のようだ。
「あ……!」
運転席の男が驚いたように声をあげる。
「今度はなん……」
私の隣の男が苛立った瞬間。
車の窓ガラスに、何か硬いものが叩きつけられた。
「うわ……っ!」
フロントガラスには亀裂が蜘蛛の巣状態に入り、運転席と助手席の窓ガラスが内側へめり込む。
後部座席側の窓ガラスは無事だったが、かわりとばかりにドアに鈍器がぶつけられた音がした。