【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ
「く、車を出せ! はやく!!」
私の隣にいた男が、運転席の男へ向かって命令を出す。
しかし取り囲まれた中、アクセルを踏む勇気は、運転席の男に無いようだ。
「無理だよ……!」
「どかねぇヤツは、ひいちまえ!!」
怒鳴り声に呼応するように、ドンッと大きく運転席側のドアを叩かれると、運転席の男は短く悲鳴をあげた。
「なんなんだよ、一体!」
わけがわからない様子で、警戒感露わに、少し怯えも滲ませながら、車内で男たちが中央寄りに固まる。
それが見えたとは思えないが、ドアからドンッとひときわ大きな音と、振動が伝わった。
「開けろや」
声なく襲撃していた集団から初めて、一言だけ、告げられる。
「開けんなよ、絶対」
「わかってるよ!」
開ける気がないのは相手も承知の上で命令したようで、その間もずっと、車は叩かれたままだった。
「チッ。面倒かけさせんなや」
運転席側の窓ガラスが、バールのようなもので破られ、枠に残ったガラスで傷がつくのも厭わない様子で腕が伸びて入ってきた。
運転席の男が反応するより早く、集中ロックが外され、全ドアが開け放たれた。