【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ


既に戦意を喪失していた運転席の男は、腕を掴まれて車から引きずり出され、易々と退場させられてしまう。


私の隣にいた男は、虚勢を張るだけあって、ドアから侵入しようとした人影を蹴り出そうと足を向けた。


しかしそのまま複数の手に掴まれ、振り払えないまま車外へ。


他の男たちも混戦状態で、車内には私だけが取り残されている。


この期に乗じて逃げ出せばいいとわかっていたが、車外へ出たが最後、また別の悪夢に移行してしまいそうで、なかなか踏み出せずにいた。


人数の多さや、車よりも機動力の高いであろうバイクを目の前いっぱいにしてしまっては、逃走を躊躇うに充分だ。


ここがどこかもわからない私には、彼らの目を盗んで逃げ出すのは、途方もなく無謀に思えた。


そうして私がもたもたとしている間、車外では、人数の違いが顕著であった事もあり、早くも勝敗が明らかになっていた。


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