【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ


「あ……さっきの」


私の口から思わず飛び出した言葉に、相手は口元を緩める。


「間に合った?」


ユキトさんの隣にいたのは、つい先程も男達を追い払ってくれた、あのひとだった。


「あ……はい。ありがとうございます」


いーえ、と柔らかい声の返事が聞こえ、私は漸く、危機が去った事を実感した。


それでも、一度凝り固まった緊張は、すぐに安堵の息をつけるほど、易々ととけたりはしない。


腰が抜けたようになっている私に、ユキトさんが言った。


「落ち着いたら送っていくよ。
でもその前に、少しだけ移動しようか。
彼らの目が醒めたら面倒だから」


促され、たどたどしく手足を動かす。


座席からうまく腰を浮かすことが出来なくて、ずりずりと這うように車外へ出た。


「しんどかったら、ほれ、掴まりな」


ユキトさんの隣からそう声が掛かり、腕が突き出される。


大丈夫、と返す間もなく足をもつれさせてしまった私の身体が、宙に浮いた。


< 295 / 299 >

この作品をシェア

pagetop