【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ
「ケーキ、2個ね」
一瞬ぽかんとしてしまったけれど、すぐに合点がいき、急いで頷く。
男達を追い払ってくれたお礼、2回分。
「よし。じゃ行こっか」
「え? あの、何処へ」
つい尋ねてしまった。
彼らは車についてきたわけだから、ここまでの道はわかっている筈で、かたやここが何処かもわからない私。
先程までの恐ろしさが払拭されてないのもあり、行き先くらいは確認しないと落ち着けない。
何処と言われようが、今の私は彼らに着いて行くしか道はないのだが。
「ひとまず俺んち」
「へ?」
返ってきた場所を示す言葉は、私に予測出来る範疇をがっつり越えていて、思わず鼻から抜ける間抜けな声を出してしまった。
「ユキ、あとは適当にやっといて」
「わかりました。解散後、各自ついていくのは自由ですよね?」
私が乗せられた隣のバイクに跨がって、にこっと笑うユキトさん。
ユキトさんもバイクに乗るんだ……
驚きと、意外な一面を見ることが出来た喜びよりも、胸を占めるのは、チクリとした切なさ。
「あのね、俺はもう引退したの。なんでズルズルお前らと走らなきゃならんのよ」
しっしっと手で払う仕草をするのを、気に止める風もなくにこにこと微笑むユキトさん。
はぁ、と溜め息がきこえて程なく、陥落が告げられた。
「ったく、ユキにはかなわねーな。勝手にしろ」