【唯我独尊カレシ。】俺様*オマエ*まるかじりッ
言質をとったユキトさんは、柔らかな笑みを浮かべた。
バイクに跨がってなければ、ここを学校と錯覚しそうな程に、私の見知ったユキトさんだった。
笑みを残しつつも、バイクの集団に向かって何やら指示を出し始めたユキトさんを、私はぼーっと見つめる。
生徒たちに相対するのは、学校では専ら秋月会長の役目だった。
ユキトさんは生徒の聞き役で、宥め役で。
表に立つことが仕事である筈なのに、秋月会長は、無愛想で、言葉も少なかったから、ユキトさんがいつもフォロー役に回っていたのだけれど。
こんな人数に指示飛ばせるなら
……秋月会長いらないじゃん。
ユキトさん。なぜあなたが会長じゃないのですか。
そう言ってしまいたくなるほどに、ユキトさんの統率力は見事と言うしかなくて。
果たして他者とちゃんとコミュニケーションをとろうと考えているのか全くわからない秋月会長なんかより、よっぽど会長に向いてると思った。
そういえば、秋月会長は何故生徒会長なんてやってるんだろ。
向いてないっていうか、らしくない……気がする。
「さ、行こうか。
えーと、藍川さんだっけ。しっかり捕まっててな」
「はい」
示された上着を、ぎゅっと掴む。
私を乗せたバイクが走り出すと、ユキトさんのバイクが後方につくのが視線の端に映った。